土俵での活躍を夢見て支え合う、力士と地域の交流。
『陸奥部屋新富合宿』のとある1日を覗いてみた

   

16回目を迎えた『陸奥部屋新富合宿』。期間中は朝稽古を見ようと早朝から相撲ファンが集まります。力士たちが黙々と練習に励む姿の陰には、地元の有志たちによるサポートと、それに応える力士たちの交流の姿がありました。

この冬一番の寒い朝…

   

▲国道沿いにのぼりが揺れる

2019年12月4日水曜日、午前7時半。この冬一番の冷え込みとなった宮崎県新富町の朝、新富温泉サン・ルピナス横にある三納代(みなしろ)運動公園の土俵に集まった力士たち。毎年12月初旬に開催される『陸奥部屋新富合宿』の3日目は、いつもどおりの念入りなストレッチや四股から始まりました。

   

▲力士たちはさすがの柔軟性!

明るい話題で機運上昇中の陸奥部屋

毎年、幕内力士たちは巡業のため不在ですが、今年は陸奥部屋の幕下力士たちの7人に加えて、時津風部屋から7人が参加しました。振り返ると、横綱・鶴竜の移籍や、霧馬山がこの1年で2段階の昇進を遂げるなど、明るい話題の多かった2019年の陸奥部屋。町内で行われる霧馬山の昇進パーティーも8日(日)に控え、合宿を支える新富町の実行委員メンバーは忙しそうです。

   

縁の下の力持ち

「徳俵(とくだわら)って、わかる? たわらが切れた部分にある、短いたわらのこと。土俵のたわらも消耗するから、交換するんですよ」。

   

教えてくれたのは、実行委員のお一人。平日にも関わらず数人の実行委員さんが仕事の合間に会場にいらっしゃっていました。親方や部屋のスタッフたちと密に連絡を取りながら、10日間の合宿を切り盛りします。合宿が始まる前から、土俵の整備など実行委員の方々を中心に行っているそうです。

熱を帯び、迫力を増す稽古に釘付け!

ストレッチの後は、腰を落とし、左へ右へ。すり足で、土俵を進みます。これは力士が行う基本練習の一つのようです。

   

ぶつかり稽古では、胸を貸す先輩と、思い切りぶつかり立ち向かう後輩力士。下位の力士から始まり、徐々に熱を帯びた練習になっていきます。大きな体がぶつかり合う様子やその音に、ファンたちは釘付けになって見入っていました。

   

徐々に実践的な練習になり、立ち会いからの相撲が始まりました。テレビで観る相撲とはひと味違い、力士の息づかいや飛び散る汗まで間近で感じられ、迫力満点! 土俵を割ったとたん、次にやりたい力士が競って挙手して、また次の取り組みが始まります。

   

一方で、土俵の脇では個々に筋トレに励んだり、巨大なタイヤをひっくり返し続ける力士の姿も。地道なトレーニングの積み重ねで力士は鍛え上げられるのですね。

表情和らぎファンサービス

約3時間の朝稽古は、10時過ぎに終了。ファンたちはお目当ての力士と記念撮影をしようと駆け寄ります。ファンと接する力士たちは、稽古中とは違った柔らかい表情に。一気に親しみを感じるこの瞬間こそ、地元の相撲ファンたちが新富合宿に集まる理由なのかもしれません。

力士たちから地元有志たちへ、昼食の振る舞い

実行委員の石崎さんに誘われ、部屋の力士たちが寝泊まりする宿舎での昼食におじゃまさせてもらいました。

宿舎内には、新富町やその近隣の農家さんたちから差し入れられた大量の食材! 合宿10日間の力士たちの食事は、地元の温かい気持ちに支えられているのですね。

   

▲霧丸さん(左)を中心に手際よく調理が進みます

調理室では手際よく調理する力士たちが、稽古後にも関わらず元気な声を響かせています。ちゃんこを作るのは、陸奥部屋の霧丸さん。今日は鶏ダシとカツオダシをブレンドさせた、味噌風味のピリ辛ちゃんこ鍋だそうで、本当にいい香り〜!

   

▲野菜、キノコ、豚肉、厚揚げ…と、とにかく具だくさん!

実行委員をはじめ、合宿を支える地元の方々に、力士たちは感謝の気持ちを込めて手作りの料理とちゃんこを振る舞います。味わいながら実行委員長の森さんは、「新富合宿に来た力士が成長していくのが楽しみ。相撲好きな地元の年配者たちが喜んでくれるので、恩返しの気持ちでやっています」と話してくれました。

   

▲実行委員長の森さん(手前・右)、実行委員の石崎さん(手前・左)ほか地元の有志たちを囲む陸奥部屋・時津風部屋の力士たち

飛躍した霧馬山のように、どの力士にも幕内力士を目指して頑張ってほしい。陸奥部屋の繁栄を祈りつつ、新富の相撲ファンたちは、この力士たちとの交流を心から楽しんでいます。