「生きている神楽」を見よう〜新田神社大祭の朝
2月17 日。まだ底冷えするこの日は、新富町・新田地区周辺に住む人にとって特別な日。新富町の名物の一つである新田神社・春の大祭の日がやってきました。
この日は、神社に伝わる町指定無形民俗文化財「新田神楽」33番が奉納されます。朝5時から夕方5時まで舞い通す、文字通りの「大祭」なのです。
朝の神社の空気はちょっと特別
ぴんと張った冷たい空気の中に、笛の音が響いてきます。
朝7時、新田神社では「朝神楽」が既に始まっていました。この時間からカメラを抱えて神楽を見にやってきた方もちらほら。なんとはるばる埼玉や長崎から朝5時半に間に合うようやってきたという熱心な方も!
朝ごはんをごちそうに
朝神楽は、ここでちょうど一区切り。
伶人や舞手の皆さんはおのおの朝ごはんや境内の設営へ向かいます。
朝ごはんも食べずにやってきた私を見かねて、
「新田神楽はこの人に聞け!」と言われるくらいの
有名人・緒方さんが伶人さんたちの朝餉に誘ってくださいました。
湯気の立つお味噌汁をいただきながら、神楽の舞手が少なく存続が危ぶまれた時代のこと、また青年団の参加によって盛り返してきた時代があったことなど、新田神楽の歴史についてお話を聞くことができました。
若い力も大活躍!
こちらは新田学園の生徒さん。総合学習の一環として神楽を習っています。
小学2年生から中学2年生までの10人ほどが、朝から境内の設営を頑張っていました。
「今日は神楽も舞うのでドキドキします」と、白い息を吐きながら話してくれました。
着ているのは大人とお揃いの白い着物と袴。「寒くない?」と尋ねると「この下、ヒートテック!」とニヤリ。
うーん、現代っ子強し!
この時間になると、神楽に使われる全ての面も屋外の舞殿にずらりと勢揃い。
一つひとつに積み重ねた歴史と伝統を感じる「顔ぶれ」です。
生きている神楽
「ここの神楽は生きてるよ」と言うのは、趣味で県内の神楽を巡っている男性。生きている神楽というのは、地元の人達に愛されながら続いている神楽だそう。
「いろんな神楽を見ていると気が付くんだけどね、良くも悪くも観光客向けになってしまったものは結構あるよ。外の人ばかりで、地元の人がぜんぜん来ていないところもある」
「でも、新田神楽はこうして近所の人たちがたくさん来て、好きに飲んだり食べたりして楽しくやってる。これがきっと本来の姿だと思うよ。本当にいい神楽だよ」
時刻は朝8時。まだ早いと言っていい時間帯ですが、だんだんと人が集まり、境内はにぎやかになってきました。
いつの間にか、焚火のそばには机が出され、手作りの鶏めしおむすびや鯉汁の大鍋、猪肉まで所狭しと並んでいます。
「ください」と言うでもなく、何となく寄っていってつまみ、近くに居合わせた人とおしゃべりをしながら神楽を見る。知り合いは全くいなくても、確かに「この場の一員になっている」ような居心地の良さを感じます。
夕方近くになると、「大神神楽」やフィナーレとして有名な「綱切」を見に多くの方が訪れる新田神社。ですが、朝一番のこの空気もまた乙なもの。
ゆっくりした時間が流れる新田神楽の「朝」を、ぜひ早起きして味わってほしいですね。
新田神楽の雰囲気や「綱切」の様子はこちらから動画で見ることができます!https://youtu.be/YvTIqmSL_zg