新富町立富田小6年生が修学旅行で行った地元愛溢れるステキなこと
みなさん、こんにちは。
宮崎県 宮崎市立 宮崎港小学校の修学旅行の思い出といえば…
そういや友達一緒にゴーカート乗ったな~くらいの思い出しかないBEEです。
皆さんそれぞれ思い出がおありかと思いますが、ここ宮崎県児湯郡新富町の「富田(とんだ)小学校」の子どもたちが、昨年10月の修学旅行でとんだもない体験をしたと聞き、直撃取材をしてきましたので、どうぞご覧ください。
鹿児島中央駅始まって以来の快挙!!!を宮崎の小学生が
土曜日にもかかわらず、こゆ財団のラボで快く取材に応じてくれたのは、富田小6年の学級担任「木村和哉」先生。取材のときは事前に苗字だけを伺っていて、名前しかメモしなかったので気づきませんでしたが、こうやって活字を並べてみると…あれれ?
あのキムタクとは一文字違いのキムカズ先生です。
先生、申し訳ない。これで先生のお写真のハードルがかなり高くなってしまったことを先にお詫びしておきます。(キムカズ先生の写真はまだ貼りません。記事を読み進めないと見れないしくみです。笑)
そんな木村先生を含む6年生の担任3人が仕掛け、子どもたちが修学旅行で取り組んだのは、なんと「鹿児島中央駅で新富町のふるさと納税の商品をPRする」という、ファンタスティックな取組み。
これまで中学生や高校生がイベントを行ったことはあったそうですが、小学生がこのような企画を実行するのは、鹿児島中央駅でも始めてのことだったようです。
10年後もこの町に住んでみたいですか?
では、なぜこんな素敵な修学旅行ができたのでしょう?
今、全国の小・中・高でキャリア教育の根幹をなすものとして行われている「総合的な学習の時間」。小学校では平成14年度から全国的に実施されているものです。
文部科学省のHPには「自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることなどをねらいとする重要な役割」とあります。子どもたちのキャリアを形成するための大切な授業時間で、国語とか算数のように決まった内容はなく、具体的に何をするかは各小学校に任されています。
木村先生らがまず行ったのは、子どもたちへのアンケートでした。
一つは「新富町って住みやすい町ですか?」
もう一つは「10年後も住んでみたいですか?」
というもの。その結果、ほとんどの子どもたちが「新富は住みやすい」と答えたのに、一方で7~8割の子が「10年後にはこの町を出たい」と答えたそうです。
さらに先生は、町の人口動態の調査とそのグラフ化を指示します。
当然のように現れた超右肩下がりのグラフ。「え~!?」っと驚く子どもたちに「こんな状態で君たちが町を出て行ったら、新富町はどうなる?」と木村先生は追い討ちをかけます。
こんな風に、身近にある問題に自ら気づかせ「やらされる」のではなく、主体的に取り組む意欲を子どもたちから引き出す木村先生。
やっぱり先生ってスゴイなぁ…
新富町の良さって何だ?
次に子どもたちが行ったのが、人口を増やすための提案。
小学生らしく、観音山から海まで届く超ロングなすべり台をつくる、だとか大型ショッピングモールをつくるという提案が出てきたそうです。
ここでも先生は、新富町役場のまちおこし政策課とタッグを組んで仕掛けます。
教室にやってきた役場の人から「すべり台をつくるのには、すっごくお金いるよねー。大型店舗がきたら富田小の前にある商店街の人たちはどうなるかなー。」と脅しをかけ、「だったら新富に今あるものを生かしたほうがよくなーい?」と誘導尋問…ワルい大人たちですね(笑)
こうすると、子どもたちは自発的に「新富に今あるもの」って何だ?「新富の良さ」って何だ?と調べ始めるわけです。
さらに先生は用意周到です。今度は新富町に最近になって移住した、地域おこし協力隊員や起業家を、外部講師として教室に呼び、外から見た新富町の魅力を語ってもらいました。
いつもの教壇に現場のプロフェッショナルが立ち、生の声を届ける。子どもたちの目の色が変わり、自分が生まれ育った新富町で、これまで当たり前のように身近にあったものが、実は「新富の良さ」だったことに気づき始めます。
そして次は、富田小のすぐ西隣、るぴーモール虹が丘商店街に事務所を構え、新富町のふるさと納税を一手に引き受けるこゆ財団と結託。やっぱり教室に来てもらい、「新富町の良さ」がつまったふるさと納税の品々のことを紹介してもらいました。
国道10号線に隣接する「るぴーモール虹が丘商店街」。奥に見える白い建物が富田小学校。
これでもかとインプットされた子どもたち。どうなるでしょうか。そう…
アウトプットしたくなりますね。(あー耳が痛いw)
そこで木村先生が一言。「そういえば10月に修学旅行があるよね?人がたくさん集まる鹿児島中央駅に行くっちゃけど…」(後はご想像にお任せします。)
ティッシュを配っている人の気持ちが分かった
このようにして平成29年10月18日、鹿児島中央駅で前代未聞の小学生によるイベントが行われました。
雨ニモマケズ大声で新富町をPRする子どもたち(富田小学校ホームページより)
PRのために持っていった段ボール2箱分のピーマンやお茶は、すぐに無くなったそうです。しかし、木村先生はPR活動自体は手段であり、目的はまた別にあると言います。
この活動に関しての、子どもたちの感想です。
「(PRのための紙を)受け取ってくれる人が多かったが、受け取ってくれない人もいた。」
「目を見ながら話すこと、大きな声で呼びかけることが大切だと思った。」
「街に行くとティッシュを配っている人がいるが、初めてその人の気持ちが分かった。」
実はこれまでの自発的な行動と得られたフィードバックこそが、キャリア教育の根幹であり、将来に生きてくる力になるのだと木村先生は教えてくれました。
PISA調査(OECD加盟国の多くで義務教育の終了段階にある15歳の生徒を対象に、読解力、数学知識、科学知識、問題解決を調査する)で、日本は「学習意欲が低い」のに「学力は高い」という何だかイビツな結果が出ているそうです。
勉強を無理矢理「やらされている」という状態なのかもしれません。
何のために勉強をするのか。これが将来何につながるのか。
国語や算数といった各教科で身に着けた基礎学力をもとに、総合的な学習の時間で教科を横断しながら自発的に考えることで、知っていることをどのように生かし、社会のために役立てていくのか。富田小の6年生たちはいつの間にか学んでいた訳で、これが先生の目的だったのです。
この経験は、子どもたちの自信となり、大きくなってもきっと嬉しかったこと、悔しかったことの感動体験として思い出されることでしょう。
一生懸命の過程に感動の種がある
木村先生にお話を伺ったのは平成30年3月17日。次の金曜日は卒業式という時期でした。
学び舎を後にする子どもたちに、先生から贈る言葉は?と伺うと「決めた目標を口だけで終わらせない。目標に向かって行動と努力をするように」とのこと。
例えば、運動会などで目標を決めようとすると、決まり文句のようにすぐ「ダブル優勝(総合優勝+応援優勝)」と子どもたちは言うそうです。じゃあそのために今日一日どんな行動を取るのか。目標までの過程を一生懸命やるからこそ、本番での結果がいっそうの喜び、いっそうの悔しさとなり、その経験が子どもの成長や将来につながっていく。とにかく過程を大切にしてほしいとのことでした。
キムカズ先生こと木村和哉先生。うん、イケメンです。ちなみに既婚者ですのであしからず。
そんな木村先生は富田小勤務5年目。別の小学校へ異動になってもおかしくない年数です。つい先日、教育委員会の人事異動の内示があったと思うのですが、そこは口を割りませんでした。(当然じゃ!)
しかし、もし富田小に残るなら個人的には、来年度の総合的な学習の時間では、小学校のすぐ隣のるぴーモール虹が丘商店街で、毎月行われている「こゆ朝市」と絡めてみたいとのこと。
朝市は、町の身近なところにいろんな仕事があり、いろんな働き方をしているプロフェッショナルがいることを学ぶ、すばらしい場だと考えているそうです。
キムカズ先生には、ぜひ富田小学校に残っていただき、ますますワルい大人たちとつるんでもらって、新富の未来を担う子どもたちのために頑張ってほしいですね!