大人が本気で楽しみ、挑戦する町へ。
『しんとみラーニングフェスティバル2021』<後編>
新しい学び、自分のための時間、枠に囚われない思考や行動。大人たちがこれらを体験するイベント『しんとみラーニングフェスティバル2021』。午後からは少しゆったりスタートし、最後はシメの大盛り上がりで幕を閉じました。
綿密に、そして大胆に企画・運営をすすめた主催者チームの思いは「やってよかった!」の一言。終了後のアンケートと振り返りから感じた“3カ年計画成功の鍵”とは?
*本イベントは、会場となっている富田浜公園エリアの利活用を促進するため、国の令和2年度地方創生推進交付金事業 新富町「海の拠点」事業 3カ年計画 第一回目実験フェーズとして企画・開催しました。
プログラム⑤「大人のための読み聞かせ」
絵本を通した大人へのメッセージ
講師:小見山 真理子さん
企画意図:休息を自分に許す
ゆったりと、午後の部スタート。
昼食後とあって、少しまったりした雰囲気のなか、絵本をたくさん抱えた小見山さんは椅子に座り、発した言葉は意外にも
「どうぞ眠ってくださいね♪」。
やさしい笑顔の小見山さんは宮崎市佐土原町在住で、新富町で子ども食堂を開いています。自分自身が本を通して学んだこと、本に支えられた経験から、読み聞かせボランティアなど数々の地域支援活動をされています。
参加者たちは横になったり仰向けになったり、すっかりリラックスして小見山さんの優しい声に身をまかせます。
もちろんその一方で、ストーリーに引き込まれ熱心に耳を寄せる参加者も。
心と体の感じるままに過ごすこの時間も、新しい体験・新しい学びですね。
「コロナ禍もあり、みなさんいろいろ無理をしておられます。
何かとむずかしい時期ですから、自分の気持ちをゆるめてほっこりする時間をつくってほしい」(小見山さん)
■今回、読んでいただいた絵本
『そらつくどん』
『ねことクラリネットふき』
『お〜い、雲よ』
『かみさまからのおくりもの』
▲他にもたくさん絵本をお持ちいただきました
プログラム⑥「クリスタルボウルでうたたね」
リラクゼーション効果でストレス解消、深い眠りへ
講師:ゆいゆいクリスタルボウル
企画意図:休息を自分に許す
読み聞かせに続き、ゆったりとリラックスする癒しの時間・クリスタルボウルの演奏へ。
水晶でできた大小さまざまなおひつ型の楽器がクリスタルボウル。“マレット”というバチでふちをたたいたり擦ったりして奏でるもの。楽譜はなく、その時のインスピレーションで演奏するので、その時その場所で違う音楽になるのだそうです。
体の奥深くに届くような、透明感のあるどこか懐かしい音。不規則でゆったりとした音と波動を体で感じていると、あっという間に眠りに落ちていきます。
わずかな時間で、会場全体が不思議なエネルギーに包まれたよう。とにかく気持ちよく、リラックスする参加者たち。どこからか寝息も聞こえてくるほどです。
演奏が終わり、音や波動に共鳴した体はお水を飲んでデトックス。ゆっくりと起き上がった皆さんの表情がその心地よさを表していました。
プログラム⑦「インプロ(即興演劇)体験」
考えすぎない、思いつくままの即興性を大切に
講師:かしの とも子さん
企画意図:失敗も含めて共有し、共創する
リラックスの時間から一転、さぁアクティブに楽しんでいきましょう!
本日、朝のヨガから参加していたお一人が、実はインプロ(即興演劇)の講師・かしのとも子さん。半日間ともに過ごし言葉を交わした間柄とあって、初めてのインプロ体験にも皆さんあまり緊張感はなさそうです。
インプロは日本語で「即興」を意味するimprovisation(インプロヴィゼーション)から生まれた言葉。古代ギリシャの時代を起源とする演劇や音楽などの創作・表現手段でしたが、次第にチームビルディングやコミュニケーションスキル、プレゼンテーション能力を向上させることから、日本でも徐々に学校教育やビジネスの分野で活用され始めています。
※参考サイト
インプロの歴史
かしのさんによると、インプロは
「気づきを得るため」
「心理的安全性を生み出すための手法」
であって、人の在り方を認め、自分の在り方も認める。考えるのではなく、軽いノリでYes、Noをはっきり示すことが大事なのだとか。
まずはじめに、かしのさん考案の「名前交換ゲーム」。歩き回り出会った人と名前を交換します。相手の名前を自分の名前として、次に出会った人とまたその名前を交換。自分の名前は誰かを渡り歩き、違う名前が自分を通り過ぎていきます…。
体を動かし頭を使い、そろそろスイッチが入ってきたようです。
さていよいよ、インプロ体験プログラムです。
昔話をアレンジしたような「どこかおかしな絵」を見ながら、そこに登場するものの気持ちになってセリフを考えます。
出会った人と、名前を交換します
最後は全員が名前を発表して、名前の本来の持ち主さんを確認しました。
▲どんぶらこ〜と流れてくるのは、…メロン!? はい、そこで一言!
グループに分かれて、絵を見ながら
「○○が×××と言っているよ」
などと挙手制でシェアします。
他の人は「いいね〜♪」と言って、さらにそのシーンの解釈やセリフを付け加えます。
『Yes,And』と同じく、どんな意見も受け入れて、さらに自分のアイデアをプラスするのがルール。
そうやってみんなの想像力から生まれた言葉や話をつなぎながら、グループごとに発表しました。
同じ絵を見ても、人によって感じ方はそれぞれ。違う視点から、違う言葉が生まれる。間違いはなく、どんな意見も言っていいんだということを、それぞれが感じた時間でした。
インプロ体験を通して見つけた「想像力」「共感力」は、自分も他人も認め発展していく社会の実現に不可欠な要素と言えそうです。
いろんな設定、いろんなセリフ。全て「いいね〜♪」でアイデアを広げます。
どんなセリフでどんな話ができたのかをシェアして終了!
プログラム⑧スポーツプログラム
全力で遊び、闘え! 屋内レクリエーション3種のチーム戦で大盛況!!
講師:福永 淳史さん(新富町地域おこし協力隊)
企画意図:共創的に競争する、検閲をはずしてまず動いてみる
いよいよラスト! 最終プログラムは、“究極の鬼ごっこ”=カバディを予定していましたが、室内用のプログラムに変更となりました。
講師を務めるのは、地域おこし協力隊として活動を始めたばかりの福永淳史さん。スポーツを活用して地域を盛り上げたい!と2月に東京から新富町に移住してきました。
さて、2つのチームに分かれ、3つのゲームで対戦です。朝から参加している皆さんも、疲れを全く見せずに全力投球!
①カバディおに
両腰に紐をつけ、5対5で相手チームの紐を取り合い、紐が多く残ったチームの勝ち。作戦通りに闘えるでしょうか?
みなさん真剣勝負!
②ジェスチャー伝言ゲーム
1番目の人がお題のワードを受け取り、ジェスチャーで2番目の人に伝えます。最後の人が受け取ったメッセージは、最初のお題と合っているでしょうか?
伝わっているかな〜!?
願い事をするのは…?
正解!「流れ星」でした。
③風船バレー
制限時間内で風船を打ち合い、最終的に相手チームのエリアにより多くの風船を入れた方が勝ち。体力勝負かと思いきや、体力温存しつつタイムアップ間際に相手コートに押し込むという頭脳勝負のメンバーも!
全員で風船を打ちまくります
ネット側の攻防は白熱!
本日のチェックアウト
「みなさんと創り上げたイベント」
まる1日通して、大人が新感覚の学び・遊びを体験した「しんとみラーニングフェスティバル2021」。8つのプログラムがいずれも無事に終了し、たくさんの笑顔にあふれた時間となりました。
最後まで残ってくださった参加者と主催者側が顔を合わせて、感想を一言ずつシェアします。
- 「はじめはドキドキだったけれど、自然に笑い合えた。楽しかった!」
- 「こんなにはしゃいだのは本当に久しぶり」
- 「初めて会った人たちと全力で何かをやるって楽しい!」
- 「若返った気分♪」
- 「みんな肯定的で、心が温かくなった」
感じたままの言葉や思いが自然にあふれてきました。
福島さん・福永さんの2人を中心とする主催者チームは、富田浜公園の利活用促進のためのモニターイベントという性質上、公園でやらなければ意味がないとの思いから、当初の計画では雨天中止の予定。しかし参加申込みしてをくださった方々や各講師、公園に隣接する民宿初音さんの理解と協力に報いたいと、室内開催へ切り替える準備も並行して行ってきました。
「私たちはずっと、雨でも『来てよかった!』と思ってもらうにはどうするべきか?と考えていました。でも実際にやってみて気づいたのは、このイベントは参加者のみなさん、講師のみなさん、関わった全ての方たちと一緒に創り上げるイベントなんだということ。本当にやって良かったです。ありがとうございました!」
大人が本気で楽しめる町。これこそ、将来子どもたちが帰りたくなる町の姿ではないでしょうか。これからのまちづくりへ向けたヒントが得られた1日となりました。
<イベントを終えて>
3カ年計画成功のポイントは
「コロナ禍からの開放」「繋がりの創出」
後日、参加者にお願いしていたアンケートからさまざまな声が集まり、以下のような気づきが得られました。
- □参加者の半数がこれまで富田浜公園エリアに足を運んだことがなかった。イベント後は「富田浜公園に家族や友人を連れて来たい」との感想を持っている方が6割にも上った。
- □「リアルイベントでの人との繋がりに気づきを得た」という感想から、コロナ禍において長らく疎遠になっていた他者との関わりをどこか求めていたのではないかと感じた。
主催者チームは、「今後もコロナ禍からの開放や人と人との繋がりを創出していくことが、3カ年計画の成功の鍵ではないか」と考えています。イベントを振り返りながら、今回の気づきを種に次年度以降の活動の方向性・アイデアが生まれてきているようです。