• 2020.07.23

プロの料理人も絶賛する牛乳。アメリカ仕込みの酪農ビジネスを新富町で確立したい!松浦千博さん

「松浦さんの牛乳はとにかく上品でおいしいんですよ。風味も違う。とにかく一度飲んでみてください!」

新富町商店街で「こゆ野菜カフェ」を営む永住美香さんから熱烈なリコメンドを受けて、新富町の酪農家、松浦牧場の松浦千博さんを永住さんとともに訪ねました。

牛乳のクオリティは土が決める

松浦牧場の2代目として、120~140頭の牛を飼育する松浦千博さん。松浦牧場の牛乳は、加工しても風味が変わらず、味もよいとプロの料理人も認めています。

松浦さんの牛乳に対するこだわりは何ですか?

松浦:良いエサや新鮮な水、牛の体調管理や環境整備などこだわりを挙げればキリがないです。しいていえば、土ですね。

風味はエサで変わるんですよ。それで以前からよりよいエサを追求していたのですが、エサは土に左右されることがわかってきました。良い土が良いエサを育み、良いエサが良い牛を育てるということですね。

良い土が良い牛乳を作るのですね。永住さんは松浦さんの牛乳にどんな魅力を感じているのですか?

永住:甘みとコクがあり、スッキリとした味わいで、くさみも気になりません。松浦さんとは以前から面識があり、松浦さんの牛乳をカフェで使いたいと思っていました。念願かなって今カフェではカフェオレやミルクティーの食材として提供していますが、今後は牛乳そのままを提供することも考えています。

松浦:そういってもらえるとうれしいですね。低温殺菌で丁寧に作られた牛乳は、少しだけメープルシロップを入れて飲んだり、味噌汁に入れたりするのもオススメ。自宅で作るクリームチーズも美味しいですよ。

永住:味噌汁にも!!それは興味をそそられますね。参考にしたいので、他にもいろいろ教えてください。

松浦:もちろん。
他にもおすすめがあるので教えますね。

帰国後に県内を襲った口蹄疫

料理人からも一目置かれる松浦さんの牛乳ですが、先代の頃からこの味を確立していたのですか?

松浦:現在もまだ確立されてはいません。小さい頃から我が家の牛乳は美味しいと思っていましたが、これからさらに進化していきたいと思っています。
また、2010年に口蹄疫で全74頭の牛を失うという経験もしましたし、とにかく走り続けたという感覚です。

口蹄疫の時、松浦さんはどうしていらっしゃったのですか?

松浦:ちょうどアメリカ留学から帰ってきたときでした。これから父と2人で頑張っていこうという矢先の出来事で、かなりの衝撃を受けました。

アメリカで学んだ農業ビジネス

アメリカに留学されていたんですね。何を学びに行っていたのですか?

松浦:農業が盛んなカリフォルニア州で、アメリカの農業を学びたいと思ったからです。いつか農業をするのであれば、世界を見ておきたいと思いましたし。

アメリカでは農業に対する価値観は変わりましたか?

松浦:規模が違いすぎましたね。アメリカでは1つの牧場で平均3000頭、多いところでは1万頭も飼育しています。経験と勘に頼る日本の農業と比べるとより企業然としていて、データや分析結果を根拠にマネジメントを行うやりかたは、日本では経験できないものだと思いました。

原動力は酪農にかける熱い想い

戻った矢先の口蹄疫。酪農を辞めるという選択肢もあったのでは?

松浦:そうですね。実際、新富町に30件ほどあった酪農家も今では8軒と4分の1ほどになりました。だけど、アメリカのイリノイ州で日本と同等の規模(60頭ほど)で酪農をしている牧場での体験が私の考えを変えてくれました。

その牧場は飼育から食品加工、販売までを一貫して行いながら、小中学生に向けた食育や、牛との触れ合いなど、積極的に活動しています。牛と触れ合うために整備された牧場ではなく、実際のリアルな牧場をそのように活用しているんですよ。子どもたちが牛と触れ合える場づくりに取り組んでいるということに、とても感銘を受けました。私が目指す牧場はこれだ!と思いましたね。

帰国後、大変なことはいろいろありましたが、がんばり続けることができたのはその経験のおかげです。

復興に向けて最初はどのようなことをしたのですか?

松浦:まずは出産2ヶ月前の牛を30頭購入することから始めました。

永住:なぜ2ヶ月前なのですか?

松浦:安定期に入っていますし、お産のストレスを考えると一番良い時期。
環境に慣れ、少しでもストレスがないようにしてあげないと、お産後に牛乳が出ないこともあるのです。

松浦牧場で働くスタッフさん

直販を始めたことで生まれたモチベーション

口蹄疫から約10年。目指している牧場の姿には近づいていますか?

松浦:現在スタッフが7名いるのですが、分業を始めとするアメリカの企業的な農業のやりかたを取り入れています。また、直販も始めるなど、少しずつかたちになってきています。スーパーなど小売店にパックを卸すまでには至っていませんが、「こゆ野菜カフェ」さんや宮崎市内のプリン屋さんなどに使っていただき、好評をいただいています。

直販をするようになって何か変化は起こりましたか?

松浦:直販をはじめてから飲食店の方と話す機会も増え、牛乳を調理した感想やその料理をお客さんに提供した反応など、お店の方が楽しそうに話してくれるのがうれしいですね。改めて牛乳の可能性を感じるとともに、もっと多くの人にこの牛乳を飲んでもらいたいと思うようになりました。また、直販をきっかけにメディアが注目してくれ、取材が来ることでスタッフのモチベーションも上がり、生き生きしているように感じます。

松浦さんの愛娘

地元の子どもたちに美味しい牛乳を

今後はどのようなことに挑戦したいですか?

松浦:パック詰めをしてスーパーなどで販売することで、気軽に松浦牧場の牛乳を味わってもらえるようにしたいと考えています。そのために味はもちろん、安定した品質にもこだわっていきたい。
また、新富町の学校給食にも使っていただき、町内の子どもたちに地元の牛乳を飲んでもらうことも目標の1つです。

永住:松浦さんの牛乳が給食で飲めるなんて贅沢。新富町はお肉、野菜、お米など美味しい食材が揃っているので、それに松浦さんの牛乳まで加わったら鬼に金棒ですね。

松浦:低温殺菌された牛乳は1週間ほどしか保存できないので、新鮮なうちに飲んでもらいたいという想いもあります。子どもの頃に飲んだ牛乳の味が忘れられなくて、大人になってからも故郷を思い出してくれるような、そんな体験につながるとうれしいです。

そのためにも、歩みを止めずに松浦牧場の良質な牛乳を追求していきたいと思います。