農家さんとの二人三脚で完成!新富生まれの甘酒「稲倉」誕生秘話―実はラベルにも秘密が?

明治25年の創業から120年以上続く「伊藤酒店」の5代目店主・伊藤寛人さん。
2019年に「新富町の国指定天然記念物『湯之宮座論梅』の梅で梅酒を作る」というプロジェクトを見事達成し、新たな目標へと向かいます。

「お酒に限らず、新富町の資源を活かしたオリジナル商品を作りたい」
伊藤さんのそんな思いから生まれたのが、新富町のお米を使った甘酒「稲倉」。
ふるさと納税の返礼品としても取扱いがはじまっています。

この甘酒が完成に至るまでには、伊藤さんだけでなく、ある二人の米農家さんの存在が欠かせません。

偶然?運命?米農家さんとの出会い

甘酒の原料となるいいお米探しに奔走する伊藤さん。
そんな時に折よく出会ったのが、新田地区で米農家を営む緒方利幸さんでした。

緒方さんとは、お互い地域の交通指導員をやっていたことで知り合いました。「人たらし」と言えそうなほどのお人柄で、新田地区では知らない人がいないほどの有名人だったんです。

そこである時、「実はこういうこと考えてるんですよね…」と話してみたところ、すぐに「いいねえ!」と乗ってくれました。

そんな緒方さんのお米を原料に使い、さあ始動!…と思いきや、ひとつの壁が。
1回の仕込みで必要になるお米の量は450キロ。
しかし、緒方さん宅にあるお米はギリギリその量に足りていなかったのです。

「できるだけ一つのお米で作りたい…」
そう思っていた時、緒方さんが紹介してくれたのが、同じく新田は伊倉地区の米農家・河崎和美さんでした。

奇しくも、伊藤さんにとって河崎さんは消防団時代の大先輩。
相談したところ二つ返事で450キロものお米を即座に出してくれたといいます。

「稲倉」にぴったりの神話

河崎さんのお米を懇意の酒蔵に送り、いよいよ甘酒の醸造がスタート。
しかし、まだやるべきことが残っていました。

「モノ」はもちろんですが「コト」にも注目が集まる時代です。商品化するにあたり「ストーリーがいる」と思いました。

ここでも心強い存在になったのが緒方さんでした。一生懸命いろんな神話・民話・伝承を調べてくれて、最後は地元の人も知らないような話を掘り出してくれたんです。それが本当に甘酒にぴったりで…その上その伝承が載っていた本の著者の方にも許可を取ってくださいました。

ラベルにも採用されたそのストーリーがこちら。

山幸彦と新田

宮崎県新富町に「伊倉」という地がある。
昔は「稲倉」と言われ、その地には「クイチダ」という場所がある。
「国一田」という意味があり、ヒコホホデミノミコト(山幸彦)が初めてここに新田を拓いたことから、その地一帯を「新田(にゅうた)」と呼ぶようになった。(永井哲雄著『みやざきの神話と伝承101』より)

今回の仕込みで完成した甘酒は1703本。「コシヒカリのいいお米を使っているので絶対おいしくなるという自信はありましたね。完成品を初めて飲んだ時はしみじみとした思いがあふれてきました」と話す伊藤さん。
緒方さんをはじめ、農家さんと何回も話し合いながら完成へとこぎつけた念願の味です。

「稲倉」は、地元の農家さんを応援するものでもあります。全国の農家さんの平均年齢は約67歳。高齢化が進んでおり、新富町でも後継者がいないことに頭を悩ませる農家さんも少なくありません。
そんな時代だからこそ地元の農家さんと二人三脚で、お互いが笑顔になれるものをつくる。「稲倉」の完成はその大きな一歩になることでしょう。

五代目 伊藤寛人のこだわり

情熱ある本物の酒を取り扱いたいと日頃から心がけておりますので、『酒の味』と同時に『造り手』の想いものせてお客様に届けたいと思っております。
『楽しい乾杯とちょっとした感動』をモットーに、これからも『ニッポンのいいもの』を追い求めていきます。――伊藤酒店HPより

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