伝説の店三代目「故郷に帰って店を」の思い実現 。食材と人に恵まれた新富で恩返し〜『千ト康らく』

「外(東京)で料理の世界に入った時から決めていました。いずれ帰って自分の店をやる、と」。

そう話すのは、2020年1月新富町にUターンして中華メインの料理店を開いた『千ト康らく』店主の中竹英之さん。JR日向新富駅近くで約60年もの間営業していた、中華料理『幸楽飯店』の息子さんです。かつての店を切り盛りしていたご両親がサポートするなか、調理歴20年の腕を振るいます。

2020年6月30日にオープンしたばかりで、ようやく1ヶ月を迎えます。町内で一番交通量の多い富田地区の国道10号沿いにあり(MAP)、昼は近隣の住民やビジネスマンのランチスポットとして、夜はアルコールも飲める居酒屋風の店として、早くもまちに定着した感すら漂わせています。

広東料理を軸に和・洋テイストを織り込んで

営業日の朝6時から店に入る英之さん。オープン前に、注文を受けた弁当や当日のランチの調理にかかります。火力の強い中華鍋専用ガスコンロに火が入ると、厨房の温度は一気に上昇。吹き出す汗をぬぐいながら、中華鍋を振っては料理を次から次へと仕上げていきます。

「自分の料理は中華だけではなくて。広東料理を軸に、これまでやってきた和食や洋食も、お客様の反応を見ながら取り入れていきます」。

祖父が創業し、父が継いだ『幸楽飯店』は中華料理の中でも四川風。以前の味を受け継ぐのではなく、英之さん独自の味を提供しているのが『千ト康らく』です。とは言え、父母の名前から一文字ずつ、そして「こうらく」も入れた絶妙な店名から、「三代目」としての想いも感じられます。

壁に貼られたメニューを見ると、「海老・トマト・バジルの包み揚げ」「牛、豚もつのアラビアータ」なども。確かに、中華料理にはない一品に目が止まりますね。

数量限定! 人気は日替わりランチ、チャーハン弁当

さて、お昼の人気メニューと言えば、限定20食の日替りランチ690円(平日のみ)。テイクアウト用のチャーハン弁当(要予約)はチャーハンにおかずが付いて540円と驚きの価格!

A定食880円(これは幸楽飯店の名残で、かつてのBランチ!)、海鮮あんかけ焼きそば860円など、どのメニューもボリュームたっぷりなので女性ならシェアもオススメ。また、メニューの半数以上がテイクアウトできるので、おうちご飯にもうれしい限り。しかも店内価格と同料金!

夜は宴会料理も相談に応じて対応可能、誕生日など特別な日にはコース料理(2500円〜)もいかがでしょう。

▲チャーハン弁当540円

人気を支える、新富の食材と人の温かさ

話題性があって、利用しやすい価格とリピートしたくなる味。オープンから客が絶えないのも納得ですが、その人気を支えているのは新富の食材と人情だと英之さんは話します。

「やっぱり新富の食材は美味しいですよ。野菜も肉も、魚も。そして、知り合いの農家さんから『商品にならないものだけど…』といって分けてもらったりすることもあります。食べ物で商売する以上、食品ロスなども減らして地域に貢献していきたいですね」。

▲オープン前の準備に集中する、店主の中竹英之さん

食材の良さ、人のつながりの温かさに支えられ、『千ト康らく』は好発進。ランチに、夜ご飯に、テイクアウトしておうちご飯にと、古くて新しい新富の食スポットをぜひ利用してみては。

〜番外編〜かつての名店『幸楽飯店』店主=お父さんの想い

英之さんが鍋を振る一方で、食材の下処理や仕込みを黙々と続けているのは、かつての『幸楽飯店』二代目、中竹康公さん。40年間店を切り盛りし、惜しまれながら閉店したのが8年前。英之さんの帰郷・創業を機に再び調理場に立つことになりました。

「まあ、うれしい気持ちはもちろんあるけれど、不安な気持ちだってある。一言では伝えられないね。料理で40年やってきたから、店を続ける大変さや食べ物を扱う怖さも知っているからね」。

そんな今、改めて気づくことがあるといいます。

「昔は仕事で精一杯だったけど、歳をとり、前とは違った立場で店に立つと、以前のお客さんや知り合いの温かい気持ちに気づいて、大切にされていたんだなあって思いますね。本当にありがたい、感謝の気持ちです」。

今はギョーザ一つにしても、自分のやり方ではなく「英之さんの餃子」を仕込みます。夫婦で黒子に徹しながら、一歩引いた優しいまなざしで息子さんをサポートしています。

【千ト康らく】
住所:宮崎県児湯郡新富町富田2丁目4-2 MAP 
TEL.0983-33-2500 
営業時間:11:30〜14:00、17:20〜21:00 
定休日:毎週月曜日、第3日曜日(その他の日曜はランチタイムのみ営業)
駐車場:店周辺8台、マルショク側駐車場もあり
席数:26席(テーブル&カウンター)