

28歳で脱サラし、宮崎マンゴーで農業にチャレンジ
宮崎ではあまり見られないポット栽培をしているマンゴー農家が新富町にあります。地植え栽培のマンゴーは見たことがありましたが、この栽培方法を見るのは初めて。ちょうどJAへの出荷作業に追われる農場にお邪魔して、ハウスを見せていただきました。
なぜポット栽培にしたのか、どういったメリットがあるのか、その苦労など、聞きたいことが幾つも浮かびます。児玉農園の児玉潤一郎さんに直撃しました。
高鍋で見たポット栽培に感動
元々、児玉さんの実家は、キュウリと米の農家でした。水稲の手伝いをすることはありましたが、農業はあまり興味がなかったそうです。では、なぜマンゴー農家に?それは、あるマンゴー栽培に衝撃を受けたからでした。
28歳までサラリーマンをしていました。高鍋の農家の方のマンゴーハウスで、マンゴーがなっているのを初めて見て、すごいと思ったんです。土耕栽培ではなくポット栽培でされていて、これをやりたいと思いました。
植木鉢(ポット)に入れて栽培する方法は、60年ほど前に鹿児島県指宿市で始められた栽培方法だそうです。同じ頃、西佐土原でもやり始めた方がいて、宮崎でも数軒の農家で取り入れられていました。でも、宮崎はほとんどが土耕栽培。ポット栽培は珍しかったのです。
肥料や水の調整ができ、理想の樹体がつくれる
それでも児玉さんは、最初にハウスを見せてもらった高鍋の師匠に教わりながら、ポット栽培を始めます。最初は10aのハウスを借りてスタート。
ポット栽培のいいところは、やりたいときに肥料をあげられる、水を管理できること、糖度が上がりやすいことなどです。1本1本それぞれ管理ができます。
今では、なんと30aのハウスに600本ものマンゴーの木があり、それを2人で管理しています。鉢に植えているので、ほぼ毎日、水やりをするということで、メリットも大きいですが、大変な労力も必要です。
ポットは、最初は容量200ℓのものを使っていましたが、今は80ℓがいいのではないかと、80ℓのポットを中心にしています。小さい苗から成長に合わせて20、60、80、200ℓと植え替えていくことで、根が暴れないので、自分の理想の範囲の樹体を維持できるのも大きなメリットです。少しずつ土の量を増やしていくことで、確実に花を咲かせるようにします。
毎年、違う栽培を試しながら経験を蓄積
マンゴーハウスを見せていただくと、完熟して今にも落ちそうなマンゴーがネットの中で待機中。甘い香りが漂っています。今年は、ポット栽培とも違う初めての挑戦をしているそうです。出荷は5月初めから6月中旬まで。
根の一部が土中に入るように、土の量はこれでいいと思う量でやってみています。これまでの15年の経験で、これはいいんじゃないかなと自信を持っているところです。
マンゴー栽培で一番難しいことを尋ねると「花を付けさせるところ」と返ってきました。必ず花を付けるわけではないのです。マンゴーへの愛がある故に、葛藤もあると言います。
僕たちがやっているのは不自然な栽培ですよね。決まった時期に花を咲かせないといけない。無理をさせてはいますよね。
面白いのは「いいマンゴーが理想としている収量とれること」。でも「そうなったら不安もある」といいます。翌年の気候はまた違います。現在、マンゴーをやり始めて15年目。「まだ15回」の挑戦です。試行錯誤をしながらのチャレンジは、まだまだ続いていきます。
新しい作物の栽培で新しい発見が
今、児玉農園では、キュウリのハウス栽培も手掛けています。野菜の栽培は、果樹とは違う方法があり、果樹栽培のヒントになる部分がたくさんあるそうです。さらに今年は、トマトの栽培も始める予定です。
そしてもう一つ、楽しみなのがライチを定植したこと。実は15年前にマンゴーを始めるとき、迷っていた果樹がライチでした。
マンゴーができるようになったらライチもやってみたいと思っていたので、ようやくです。
さらにこれから、ある珍しい柑橘を育てる準備をしています。児玉さんのマンゴーハウスの前には、長年、ハウスみかんの栽培を続けてきたベテラン農家のハウスがあります。
もう農業を辞められると聞いた児玉さんは「地域のすごい技術がなくなってしまうのはもったいないです。その方の技術を少しでも受け継ぎたい。」と、その方にも栽培方法を教わっています。児玉さんのさまざまなチャレンジにも注目です。