あなたのそばにありますか?思わず食べたくなるもの~新富町でソバを作りつづけている農家さんのお話~

皆様、宮崎県でソバを作っていること知っていましたでしょうか?

ソバは湿害にきわめて弱く、痩せた土地でも育ちます。

宮崎県内有数の生産量を誇る、新富町でソバ農家の吉岡さんに取材をさせて頂きました。

「続けることで付加価値ができる」

明治20年から代々続く、ソバ農家の吉岡喜徳さんは、そう仰いました。

隣では、奥様である紀さんが、にこにこしながら美味しいお茶を入れて下さっています。

暖かな土曜日の午後、お二人のお話を伺いながら、続けることで出来る付加価値とは何だろうと、

ワクワクした気持ちでいました。

笑顔あふれる吉岡さんご夫婦を見て、直観的にですが、こんな笑顔の素敵な人たちの愛を一身に受けて育ったソバはきっと美味しいし、食べたら元気が出そうだなと思いました。

      吉岡 喜徳さん(よしおか きのり)  吉岡 紀さん(よしおか のり)

 

喜徳さんは照れながら「名前が二人とものりなんだ」と教えてくださいました。

付加価値をつける切り口

吉岡さんの住む、宮之首地区は昔からソバを作っていたそうで、12月12日に冬まつりがあり、その時に里帰りをした人や新田原基地の人にソバをふるまい、もてなしていた背景があります。その時は、個人個人でソバを石臼で引いたりしていましたが、昭和40年以降は、個人で製粉するのをやめ、製粉所に送るようになるなどオペレーションの技術を取り入れたそうです。

効率的に生産できるようになり、製粉所から粉を、京都や大阪へ送っていましたが、新富町内でソバを作っているにも関わらず、ソバを食べる場所がないのが現状でした。

吉岡さんは、町内に蕎麦を食べられる場所があれば、粉にして送るよりも付加価値がつけられるのではと考えました。お店に出すことで、雇用が生まれ、集客を通じて観光客も呼べる。すぐにお店は出せませんでしたが、ゴルフ場の昼食メニューに蕎麦を出すことから始まり、そこから約10年かけて、ソバを打つ人を探し、お店を出してくれる人を探しました。今では、新富町には3店舗ソバ屋があり、新富町で一年中蕎麦を食べられます。

続けること

吉岡さんの打つ蕎麦は、美味しいと評判を呼び、元総理や県知事からもオファーが来るそうです。奥様と二人、年末の3日間は、年越しソバ用のソバをひたすらうち、切ってはパックにつめる。もう何年も年末にそばをふるまっているとのことで、「美味しい」といって喜んでもらえているから続けていられるのだと笑って仰ってました。

 

ご自宅にある蕎麦をうつ作業場の前にて

 

 

 

 

 

 

 

 

取材を通じて感じたこと

吉岡さんご夫婦のお話を伺った後、生産者の人柄や、作る時の取り組みを聞くことは、食べる時に安心するし、冒頭でも言いましたが元気になるなと思いました。

食べ物を選ぶ時、目で見て「美味しそう」だと思い、手にとることが多いと思います。私の場合、この人が作ったからという理由で食べたいと思うことがほとんど無かった為、自分にこんな気持ちが芽生えたことに、とても驚きました。

「君が食べたものをいってみたまえ。君がどんな人か言い当てて見せよう」(ブリア・サバラン)

取材を終えて、この言葉を思い出しました。「食べ物で人はつくられる」当たり前のことをですが、普段忘れがちなことです。吉岡さんご夫婦の作った蕎麦が食べてみたいと思うのは、お二人の素敵な笑顔と暖かな人柄からこそだと感じました。

新富町のお蕎麦屋さんに行って、ソバをお腹一杯食べてこようと思います。