花に癒され、あたたかさに触れる。新富町でみんなに愛される花屋はここにあった。

店内に並ぶ鮮やかな花

 

今回訪れたのは、新富町商店街にある「グリーンショップ K フラワー」。

店主の長友恵一さんにお話を伺った。

◇   ◇   ◇

花屋は卒園・卒業式や退職のお祝いが重なるこの3月が多忙期である。

取材日はちょうど地元の卒園式の日で、店内にはたくさんのお客様が。

すると1組の親子連れから「お世話になったおばあちゃんに花束を贈りたい」とオーダーが入った。

長友さんの目つきが変わった。

 

この町に花屋を残したい。

 

ショーケースにはたくさんの季節の花が

 

学生時代、長友さんはデザイン関係の仕事に就きたいと考えていた。

無事宮崎県内でデザイン関係の会社に就職できたが、心労がたたって退職。26歳で地元・新富町に戻ってきた。

母親が隣町・高鍋町で「福岡生花店」を営んでいたため、長友さんはその仕事を手伝うようになった。

 

ある日、母親がこうつぶやいた。

「新富にある分店ね、閉めようかと思うの」

この一言が長友さんの人生を大きく変えた。

 

分店をなくすのはもったいないという思いで、長友さんはその店を引き受けることに。

同時に経営者となり、店名を「グリーンショップ K フラワー」に変更。

光を失いかけていたこの店に、長友さんは新たな命を吹き込んだ。

 

「毎日が楽しい」そう思い続けてきた6年間

 

オーダーされた花束を作る長友さん

 

花束に選ぶ花を選んだ長友さんは、素早い手付きで作業を進める。

作業が終わるのを待っていたら、「質問してもいいですよ」ということで質問を投げかけてみた。

◇   ◇   ◇

筆者「デザインの会社を辞めてこの店を継がれたんですね。それからどのくらいになるんですか?」

長友さん「もう6年になります。あっという間ですね」

筆者「どんな6年間でしたか?」

長友さん「気づいたら6年も経っていた、というのが正直な気持ちです(笑)」

筆者「そうなんですね(笑)。 大変なこともありましたか?」

長友さん「仕事を辞めて実家に戻ってきた自分にとって、花屋という新しい仕事が舞い込んできたので、最初は『ラッキー』くらいにしか思っていませんでした。でも意外と重労働で、気を遣うこともたくさんありますね」

筆者「どんなことに気を遣われているんですか?」

長友さん「花は鮮度が命ですからね。夏は暑さとの戦いです。冬はとにかく水が冷たいですね…。でも花のためには我慢です」

筆者「お仕事をされている中で、どんなことにやりがいを感じますか?」

長友さん「自己の成長という点では、技術のある世界にいられることが楽しいです」

筆者「技術、ですか。それって花の組み合わせ方なども含まれるのでしょうか?」

長友さん「そうですね。『どうやったらきれいな花束になるだろう』とか『どうすればお客様のご要望に応えられるだろう』ということを毎日考えています。考えることが楽しいんです」

筆者「そのような思いで花束を作ってくれるのは、お客様も嬉しいでしょうね。『技術』について、他のお花屋さんとお話されることもあるんですか?」

長友さん「他店の花屋をライバル視しているお店もあるのですが、ありがたいことに私には一緒に技術を高め合う仲間が多いので心強いです。大型ショッピングモールで行われるコンテストなどにも積極的に参加して、他の方の作品を目にするようにもしています。『こういうやり方もあるのか』と勉強になることがたくさんあるんですよ」

筆者「ご自身の技術を高めるために日々考えられているんですね。それが『楽しい』と思えるなんて素敵です」

 

花束が完成に近づいてきた

 

そうこうしているうちにオーダーされた花束が完成したようだ。

 

これからも町の人たちと共に

お話を伺っている間、店内にはたくさんのお客様の姿が見えた。

花を受け取って帰っていくお客様もいたが、ずっと店内を歩いている人も・・・。

どうやら、お客様だと思っていた人はお店側の人だったらしい(笑)。

現在、店員さんは3名。しかし毎日いろんな人が手伝いに来てくれるという。

卒園式だったこの日も、「忙しいだろう」ということで手伝ってくれていたのだ。

 

オーダーを受け付けたり、花束の完成を待つ間の話し相手になったり。

時には、花を買うためではなく店員さんと話をしに来るお客様もいるという。

とにかく人の会話が絶えず、終始にぎやかな店内だった。

 

花に囲まれて寝ているネコ

 

ちなみに店内には番犬ならぬ「番ネコ」まで。

人だけでなく、ネコまで滞在してしまうほど居心地のよい場所なのだろう。

 

人と人との交流が絶えない「グリーンショップ K フラワー」。

6年前、長友さんの手によって生まれ変わったその場所には、人のあたたかさにほっとする時間が流れていた。