幸せってなんだろう? 慶応義塾大学の前野教授に学ぶ「これからの子育て」

10月21日(日)、『新富町総合交流センターきらり』にて

「慶応大学の前野教授に学ぶ―これからの子育てで大切なこと」が開催されました。

このイベントは、子育てに悩む親や、教育従事者などを対象に開かれたもの。

「親子が一緒に幸せになるには?」

「そもそも子どもにとっての”幸せ”って?」

という問いに対する答えを、

慶応義塾大学で幸福学を研究し、「幸福」に関する著書を数多く執筆する前野隆司教授と前野マドカさんから学び、探っていくイベントです。

当日は、県内外から40名ほどの来場者が訪れました。

中には、わが子と一緒にやってきた親御さんたちも多数。

それぞれの表情からは、教育への関心の高さと情熱がうかがえます。

まず初めに、新富町の小嶋崇嗣町長と『ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス』取締役 人事総務本部長である島田由香さんが順に登壇。

親子のかかわり方の大切さについて自身のエピソードを絡めて語り、会場の空気をほぐします。

新富町の小嶋崇嗣町長

『ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス』取締役 人事総務本部長の島田由香さん

続いていよいよ、前田さんご夫妻のトークセッションのはじまりです。

前野隆司さんとマドカさんご夫妻。お二人とも「こゆ財団」のTシャツを着て登場

子育てで最も大切なのは「親が幸せであること」

研究者でありながら、ふたりの子供を育てる親でもある前田さんご夫妻。

前野隆司さんの著書『幸福学が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方』に触れ、自身の体験を踏まえつつ、ひとつの大切なメッセージを伝えています。

 

「多くの本には、

『子供が泣いているとき、どうすればいいか』『学校に行かなくなってしまったがどうすればいいか』

という悩みへの対策がつづられています。

でもこの本の中では、『あなたが幸せであれば、あらゆる問題が解決するんですよ』ということを書いています。

つまり、親自身が幸せになる方法についての本なんです」と隆司さん。

「子供は、見ていないようで、全身全霊で親をみているんです。

親が夢を持っていないのに、子どもに『夢をもちなさい』といっても伝わりません。

親自身が幸せでいきいきとしている姿を見せてあげることが、子どもの心に最も響くんです」

と言い切ります。

時折自身の子育て体験をユーモラスに交えながら進むトークセッションに、笑顔で耳を傾ける来場者たち

人の心を満たす、「4つの因子」って?

では、「幸せ」とは一体、どういうことなのでしょうか?

幸せを構成する要素にはいくつかありますが、

お金、物、地位を得た時に感じる「長続きしない幸せ」に対して、

「長続きする幸せ」を生むのが、「心の幸せに影響する4つの因子」なのだそうです。

〇その一 「やってみよう」因子

夢や目標を持ち、何かを「やってみよう」とする人は幸せです。

子育てにおいて、親自身が「私の夢はこうなんだよ」と子どもに話して聞かせることも大切なのだそう。

 

〇その二 「ありがとう」因子

具体的なことでなくても、「あなたがいてくれてよかった、ありがとう」と言いあうだけで、お互いが幸せになります。

また、親がポジティブな言葉を遣っていれば、子どももまたポジティブな言葉遣いができるようになります。

 

〇その三 「なんとかなる」因子

前向きに、楽観的に、チャレンジする人が幸せ。

「算数ができない」「早く走れない」など、目の前のネガティブな要素に一喜一憂せず、「いつかはできるようになる」という気持ちでいることが大切です。

 

〇その四 「ありのまま」因子

他人と比べ過ぎず、自分らしくいること。

人と比べていると見えなくなってしまう子供の良さ、あるいは自分の良さを、きちんと見つめることが欠かせないのだそう。

幸せのタネを見つけよう ~ワークショップ~

幸せになるための4つの因子が分かったところで、早速実践編です。

来場者の手元には「しあわせ応援シート」なるもの配られました。

そこには四つ葉のクローバーのイラストと、4つの質問が。

 

「夢や目標は?」

「感謝していることは?」

「なんとかなるとがんばっていることは?」

「自分らしく、個性をいかしてやっていることは?」

 

子育てに、あるいは仕事に、忙しい日々だとわざわざ考えもしないことばかり。

来場者は、この質問に対する自分の答えを探すワークショップに取り組みました。

「普段、人と話さないような根源的なことだからこそ、あえて機会を設けることが必要なんです。

夫婦で、親子で、お互いの夢や感謝の気持ちをシェアすることも、幸せにつながります」と前田さんは話します。

真剣な顔つきでワークに取り組む来場者たち

あぶりだされる、自分の内面

来場者たちは丁寧に、四つ葉のクローバーを4つの質問への答えで埋めていきます。

「夢は、海外暮らし」「介護施設をつくること」

「わが子へ、産まれてきてくれて感謝」

など、それぞれ普段言葉にしない夢や感謝の言葉があふれ出しています。

書き終わったら、テーブル内でそれぞれの夢を語り、お互いのシートに応援メッセージを書き込んでいきます。

見ると皆さん、他の人の回答に対しても思うことがギッシリ。

自分のことだけでなく、人の思いにも触れ、充実した時間となったようです。

講座の最後には、

「これを職場や家庭、いろんな場面で実践してみてください。

親子でやれば、コミュニケーションの手段にもなりますし、子どものやる気も高まるはずです」と隆司さん。

マドカさんは

「自分自身が幸せになる、ということを忘れないで欲しいと思います。

それがすべての生活、人間関係がうまくいくきっかけになるんです。

人とつながり、自分がしたいことにチャレンジして、自分らしさを忘れないでいてくだささい」

と来場者へメッセージを贈りました。

親と子、それぞれが自分らしくあること。そして、お互いを認め合うこと。

それが幸せな親子関係への第一歩かも知れません。