プロに学ぼう!しんとみ小商い塾 「売上拡大講座〜今日からできる。売上拡大7手法〜」
2019年7月3日、新富町総合交流センターきらり大集会室にて、「売上拡大講座〜今日からできる売上拡大7手法〜」が開催されました。これは、『一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(略称:こゆ財団)』の橋本健太さんが新富町内の農商工業者に現状や課題の聞き取りをするなかで、必要と感じた学びの場を提供するために企画した「しんとみ小商い塾」の一環として開かれたものです。
集まったのは、新富町内の商業・農業・畜産業など、個人事業主や経営者たち。「売り上げを伸ばしたい」「新しい商品を作りたい」との思いを抱えて、また何らか業務改善へのヒントを探しに、今回の講座に参加していました。
講師は(株)Fagri代表の佐々木健介氏。2016年まで戦略コンサルタンティング会社、2016年〜2019年まで(株)リクルートに勤務していた経歴をお持ちです。
佐々木さんは、和歌山県有田市で15軒の農家が参加する新販路開拓講座を開催。座学と実践による1年間の講座で、8つの新販路開拓、みかん43tを単価28%増での販売を実現。そういった経験を基に作り上げた、新富町の農商工業者に売上アップの方法、工夫の仕方や思考の構築方法を学べる貴重な場となりました。
「売上拡大の7手法」とは?
事業者、経営者であれば誰もが望む「売上の拡大」。佐々木さんは、4つのステップにおける7つの手法について、詳しく説明しました。
<広く学ぶ>①先人の知恵に学ぶ
まずは学びと情報収集において大切なのが、「①先人の知恵に学ぶ」こと。図書館で参考資料を探す時にヒットしやすい検索キーワードや、インターネットの各業種専門おすすめニュースサイトなど、実例を挙げながら紹介しました。また、ニュースサイトに記事が上がったらお知らせしてくれるアプリ「InoReader」をダウンロードして、チェックしたいニュースサイトを登録しておくと便利とのこと。最新の研究結果がすぐに入手できます。YouTubeにも参考になる動画がたくさんあります。これも「先人の知恵」。できることは真似してやってみると、売上拡大につながるかもしれませんね。
<商品を作る>②手早く計画する
思いついた計画は、手早くまとめて目に見える形にする必要があります。大企業なら、社内外を納得させる企画書が必要ですが、中小企業は要点を押さえてさえいればOK。
その場合、佐々木さんがおすすめするのは「リーンキャンバス」という簡単な事業計画の様式。「ターゲットが抱える課題は何か」、「コストはどのくらいかかるか」「どのように収益を出すのか」など9つの質問に答えていくことで、新商品や新規事業の規模や全体像を把握することができます。
この日佐々木さんは新富町の皆さんが使いやすい形に作り替えたリーンキャンバスを配りました。話を聞きながら、参加者たちは自分の事業の場合に当てはめて少しずつ埋めていきます。
「やるべきか迷ったとき、やりながら辛くなったときにぜひ書いてみてください。つまづいているポイントが見えて、解決方法を探すことができます」と佐々木さんは話します。
<商品を作る>③プロの意見を聞いてみる
商品作りや新規事業に向けて自分が作ったもの、やったことに対して、プロの意見を聞こう、という手法です。この場合の「プロ」とは、何か結果を出している人を指します。友人、先輩、地域で活躍している人など、身近な人がおすすめ。特に、「この人ができるなら、こう言うなら自分にもきっとできる!」と思わせてくれる人がベストだそう。
<商品を作る>④改善を止めない
佐々木さんが例に挙げたのは、ファミリーレストランチェーン『サイゼリヤ』の人気メニュー「ミラノ風ドリア」。この商品は1000回以上も改善を重ねて、人気商品となったそうです。サイゼリヤ社長の “おいしいから売れるのではない、売れているのがおいしい料理だ”という言葉を引用し、ロジカルな思考で冷静に判断することの大切さも教えてくれました。コツコツと努力を続けることは、いつの時代も大切なんですね。
<宣伝する>⑤他人の船に乗せてもらおう
自分で宣伝用のツールを作ったり、SNSを使って発信したり、優先順位をつけた上であらゆる宣伝を試してみよう、と話す佐々木さん。優先順位の高いものとしては「他人の力を借りること」。例えば新富町で開催される「こゆ朝市」に出店したり、「ふるさと納税」の返礼品にはぜひ自社のチラシを入れること。「商談会」などでバイヤーさんとつながることも効果的です。
また、世の中の新しい取り組みには、ぜひ乗ってみること。スタート時はやっている人たちの熱意があるからどんどん宣伝してくれます。すでに広まっているところに入り込むのは難しいけれど、これから広まるものだと先行者利益が受けられる可能性も高いとか。自分の業種にどんな市場があるのか探してみるのも良さそうです。
<宣伝する>⑥お客さんに売ってもらう
他人の力を借りるという面では、「お客様に売ってもらう」こともおすすめ。広告や宣伝があふれる世の中、すでにファンになってくれているお客様に自社の商品を紹介してもらうことの方が効果的だったりします。
佐々木さんの経験で成功を収めた事例が「おすそ分け袋」。お客様が購入してくれた時に、周囲に配れるような商品が少量入った小袋を渡します。身近な人に配ってもらうことで、新たなファンの獲得につながったそうです。
<販売する>⑦従業員に活き活き働いてもらう
従業員が喜ぶことと言えば、給料アップ! 目標を設定し、自分の頑張りで達成できた時に報酬が増える仕組みを作ることが、まず1つ。
そして、自分がやっていることに意義を感じてもらうこと。例えばJR東日本では、新幹線の清掃員を「7分間でお客様に感動を与える劇団員」と認識を変えさせた事例があります。
従業員を変えようとするのではなく、マネジメント方法を変えることが大事だというお話でした。
学ぶ・情報収集→商品を作る→宣伝する→販売する、という売上アップ、商品開発のステップのなかで、効果的な手法を事例とともに学んだ時間でした。
仲間の工夫に学ぼう!天然記念物「湯之宮座論梅」を使った『座論梅梅酒』の開発
参加者の1人、『伊藤酒屋』の伊藤寛人さんは、昨年初めて『座論梅梅酒』を開発・販売しました。ここで、伊藤さんに商品開発のきっかけや苦悩など、販売に至るまでの経緯を話してもらいました。
鹿児島の知り合いの酒屋さんが、近くの酒蔵さんと一緒に「19歳の焼酎プロジェクト」という事業をスタート。とても感銘し、自分も何か地域に貢献できないかと考えました。そこで、座論梅の梅を使った梅酒作りを企画。国の天然記念物の実が使えるか、小規模の梅酒作りをどこが受けてくれるか、周りの協力を得て1つひとつクリアしながら製造することができました。
720ml入り2,580円と少々高めの価格になりましたが、110本が完売。利益が出せるようになれば、梅の木の管理費にあてるなど町に還元したいところです。
「新たな課題はありますか?」との佐々木さんの問いに、
「梅酒を瓶詰めした後、梅の実が残りました。これも何か商品に活用できないかなと考えているところです」と伊藤さん。
伊藤さんはFacebookやLINEを活用した宣伝にも積極的。参加者の皆さんは、そんな伊藤さんの話に熱心に耳を傾けていました。
※指定天然記念物・湯之宮座論梅とは…昭和10年に国の天然記念物に指定された、新富町湯之宮地区にある梅の古木。樹齢300年以上。宮崎の巨樹百選にも登録されている。
- 『座論梅梅酒』の記事はこちら→https://koyu.media/?p=3642
実践! 自分の事業に置き換えて考える
最後は2グループに分かれ、自分の事業の計画や悩みなどを話したり、佐々木さんにアドバイスをいただいたり、実践的なワークショップの時間。リーンキャンバスに書き込みながら、それぞれ自分の課題を再確認できたようです。
台風接近の最中でしたが、最後まで熱心に取り組まれた参加者の皆さん。これから新たな事業へのチャレンジが始まることを楽しみにしています。