• 2018.03.06

【地域を編集する学校 受講生記事】Café Kiitosのあるまち 宮崎県新富町のカフェ(3)〜在り方〜

3:在り方

食品添加物、オーガニック食品、化学物質…SNSなどで情報が受け取りやすくなった昨今、これまで知らなかった食品の裏側を知ることができ、自分はどんなものを食べ、暮らすのか。引いてはどういう生き方をしたいのか、本質的な問いを自分自身に向ける時代の風潮になって久しい。ましてや子育て中のママにとって食の話題は、関心ごとの上位にランクインすることも少なくないはずだ。
子どもに何か症状が出てから省みて、気づいていろいろ試していくうちに知識が増えていく。ほとんどのママたちはまだまだオーガニック受動者だ。

そこに来て、発信者側のイスエさん。そのバックボーンをぜひ覗き見たくなった。

 

「父親が超健康オタクでした。小さい頃から風邪や怪我をしても病院にも連れて行ってもらえなくて、とにかく自然治癒力を高めろ、という人でした。」
4人兄弟みんな薬もほとんど飲んだことがない、予防接種もしていない。

今でこそ、情報が流れているからそういう人も増えてきてはいるけれど、当時そうすることは珍しいことだったに違いない。

とにかく食材にはこだわる父親で、手作りのものが一番。
何かあったら酵素風呂に入ったり、鍼灸院に行ったり。そういう家庭で育った。

「娘は7歳ですけど、ファストフードは食べたことないです。いずれ『食べたい』って言ってきたときは仕方ないですけど、手がかけられる時期は手をかけてあげたいな、というのが本音ですね。」

イスエさんの子どもたちは知らず知らず、手作りのよさを理解しはじめている。既製品よりもママの作ったご飯やおやつが一番なことは、教わらなくても身体が知っている。

そういえば、イスエさんは父親からああしなさい、こうしなさいと言われたことは一度もないという。
父親の背中をみて、『こういうのがいいんだろうな』と感じてきた。

「子どもって、親のやることをよく見てますよね。だから身体にいいものがずっと気になっていて、子どもを産んでより感じるようになりました。子どもを守れるのってお母さんだけじゃないですか。」

そう、子どもの健康を守れるかどうかは母親の選択次第なのだ。

心地よいってことが大事

それでも、あるときどうしてもスーパーのパンが食べたくなった。裏の成分表示にはたっぷりの添加物の名前が。

「授乳中で、少しためらったけど食べたくて食べちゃった。そしたら、てきめんに子どもの顔にブツブツが出たんです。」

そのとき、病気になる原因は食事なんだとハッキリ分かったという。

「忙しいからって子どもの食事の手を抜きたくないと思って、惣菜などに頼ることなく毎日手作りしています。
それは、やっぱりお店でいいものを出して、子どもたちは簡単に済ますってなんか違うと思うから。」

子どもたちが元気でいること、それがイスエさんの元気の源だ。
イスエさんのモットーは〝人の一番の基盤となる衣食住を疎かにしない〟ということ。

「それが乱れるとブレちゃったりザワザワしたりすると思うんですよね。
別にいいものに囲まれるということじゃなくて、心地よいってことが大事。」

もちろんその精神は「Café Kiitos」にも表れている。
忙しいからって手抜きしたり、材料を安くしたりということは絶対にしない。無添加にこだわる。

イスエさんの在り方

母親は子どものために安心で安全な食べものを求めている。でも意外とそういうお店は地方ではまだ少ない。

「食べものの知識ってある人とない人がいますよね。例えばイーストフードってなに?って。私はパンを作っているから知っていますけど、すごく体に悪い添加物なんだよっていうことを伝えると、じゃあやめようって思える。」

幼少期のご飯はとても大事。その原体験があったら、ファストフードを食べたい時期があったとしてもいずれまた戻ってきてくれるはず。イスエさんは祈りを込めてベーグルをコネる。

今では、イスエさんのベーグルを通して「きび砂糖を使い始めた」「牛乳の代わりに豆乳にしてみた」という話もちらほら聞こえて来る。

「少しずつ浸透してきてるのかな。初心にこだわって、ブレずにいられるから今もお客さんが来てくれるのかなって。食べることの大切さを伝え続けていこうと思います。」

大きな軸の中に宿る精神を垣間見た気がした。在り方の定まった人は強く美しいと思う。


つづく

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