

おいしいキャベツを作り続ける。 地域のみんなの思いをこめて-前田 智宏さん
イマイチ気分が乗らない日は、
体を動かしちゃった方が早い。
国内最大級の1,100万本! ひまわりが咲き誇る広大な畑
見渡す限りの黄色い世界。夏の風物詩として宮崎県ではすっかり定着した「キャベツ畑のひまわり祭り」では、国内では指折りの規模を誇るおよそ1,100万本ものひまわりが一面を覆い尽くし、訪れる者を楽しませてくれます。 このお祭りは毎年お盆の時期に開催されているもので、数え切れないほどのひまわりは自由に切り花として持って帰ることもできます。ではなぜここにはこれだけのひまわりが咲くのでしょうか。
ひまわりは地域の結束の証
実は、このひまわりはすべて土に還り、肥料となるもの。そのあとに育てられるのが、先ほどのお祭りの名前にも冠されたキャベツなのです。 ここ高鍋町持田染ヶ岡地区ではこれまで、一部の農家さんがキャベツを収穫した後の景色も素敵なものにしたいと、ひまわりを栽培していました。そんな中の2010年、宮崎県は口蹄疫(ヒツジ、ウシ、ブタなどの家畜がかかるウイルス性疾患)で農業に大きな被害が発生。 それまで使用していた牛や豚の堆肥が、感染ぼ拡大防止のために使用できなくなったことから、多くの農家さんはひまわりを肥料(緑肥)として栽培する動きが広がっていきました。
やがてたくさんの花を咲かせたひまわりは、口蹄疫で大きな打撃を受け、気持ちも沈んでいた地域の人々に明るさをもたらします。 こんな見事なひまわり畑は他にはない。たくさんの人に来てもらって、みんなに少しでも元気を取り戻そう、と地域の人は結束。お盆期間中には観覧用のやぐらを組んだり、地元のグルメを楽しめるブースを設けたりして、キャベツ畑のひまわりはいつしか宮崎を代表するイベントになっていきました。2014年にはこうした取り組みが「内閣総理大臣賞」も受賞しています。
智宏さんがキャベツづくりに取り組んでいるこの地域には、そんな背景があったのです。
ひまわりで育つキャベツは甘みたっぷり!
智宏さんは広大な敷地に植えられたひまわりをお盆明けに土にすきこみ、緑肥として土に還します。「そこから栽培を始めて、キャベツが収穫できるのは10月下旬くらいから。たっぷりの緑肥で育ちますので、とても甘みのあるキャベツが育つんですよ」と、智宏さんは話します。
高校卒業後、サラリーマンとして働いていた智宏さんでしたが、7年前に実家の農業を継ぐことに。「高齢になった両親が元気なうちに、栽培方法を習っておきたかったんです」とその理由を語る智宏さんは、この地域でおいしいキャベツを作り続けるため、今も努力を惜しみません。
「高齢化の波はいかんともし難く、これから農業を辞めていかれる農家さんは増えていくと思います。そんな中でもこの畑をしっかり守っていけるよう、法人を作って雇用を増やし、少しでも規模を広げていきたいです」(智宏さん)。 寒玉キャベツから春キャベツまでさまざまな品種を作り続ける智宏さんの目には、広大なキャベツ畑の将来がしっかりと見据えられているようです。